この人に聞きました!
村澤 慶昭 先生 / Yoshiaki Murasawa
日本語コミュニケーション学科 学科長
音声学を専門とし、年少者教育にも携わっています。海外インターンシップで、日本語コミュニケーション学科生に身につけて欲しい能力などについて聞きました。
聞いた人:茂野志織里(武蔵野大学学生)
Q.
村澤先生が海外で学ぶ学習者の方に出会ったのはいつでしょうか。

実は、国が10万人計画を発表して初めて大学に日本語教員養成課程ができた時の学部1期生なんです。ですから、大学に来ている留学生の方と一緒に行う実習のような授業があったのでそこで出会ったのが最初かなと思います。

Q.
武蔵野大学日本語コミュニケーション学科(JC)の特徴と海外インターンシップのつながりについてお伺いしたいです。

日本語コミュニケーション学科は今二つの柱があります。一つは日本語教育、もう一つは観光関係です。その一方の重要な柱である日本語教員養成課程では国内の実習があります。それは必須ですが、皆さんには海外に羽ばたいていただきたいということも私たちの希望としてあります。そのためのプログラムとして、海外の協定校で実際の授業を見せていただいたり、そこで可能であれば教壇実習をさせていただくということは、外に飛び立つための大切なステップだと位置づけています。

Q.
海外での生の日本語教育を知って欲しいと、そういうことですか。

はい。特にアジアで日本語を学ぶ人たちが増えていますけれども、大学の機関で、どんな意図・意思でどのように学んでいるのか、私たち教員が情報提供するのではなく、自分の目で見て感じるという経験をして欲しいなと思います。

Q.
この海外インターンシップはどのような力を身につけて欲しいプログラムでしょうか

国内実習では、近くに先生がいてすぐにサポートを受けられると思いますが、海外インターンシップでは協定校の先生方にお預けする形になります。つきっきりで何かをしてもらうのではなく、自分で考えてどうすれば良いか、何を学ぶべきか、五感を働かせて主体的に学んでいく力が必要ですし、その力は将来日本語教師になるときにも、自分で授業を組み立てていく際の大きな力になると思います。

Q.
日本語教師として独り立ちするためのステップだということですか。

そうですね。それからやはり多様な学習者がいると思うんですが、その現地でどのような暮らしをしながら日本語を学んでいるのか、その背景を知ることも大切だと思うんですね。例えば、食べ物の値段がどれぐらいでどんなものを食べている人たちが、また、大学の学費だとどれくらいのお金を払ってわざわざ日本語を学んでくれてるのかというようなことを知るのは、非常に貴重な機会かなと思います。

Q.
今回の海外インターンシップは新型コロナウィルスの影響でzoomで繋がって一緒に活動するということをしました。こうしたzoomでつながることと海外で実際に海外に行くことでそれぞれ身につく能力は違うと思いますか。

今回このコロナによって、教育界だけはでなくビジネスの分野もオンラインのツールをひとつの方法として手に入れたと思います。これは、今までのものにプラスした形での新たな戦力になるのではないかと思っています。今回は、代替企画ということでしたが、オンラインの良さもありましたし、やっぱり対面の方がいいかなということもあったと思うんですね。代替できる部分とそうでない部分がはっきり分かったかと思います。
瞬時にひとつの場所に集まれるという良さが、オンラインにはあると思うんですね。ただ、先ほど言いましたように、その現場を見て五感をフルに働かせるという部分はオンラインですと映像や音声に限られてしまうので、その部分は違いますね。例えば、テレビや動画見ていてこの人すごいいい人に見えたとしても、あるいは、かっこいい!可愛い!と思ったとしても、実際に会ってみると違うってこともありますよね。持っている雰囲気っていうのがまったく違うこともありますよね。そういうところが感じられない点では、現実の世界の方が勝っていると思います。
ただ、様々なコミュニケーションスキルを身につけていくということでは、オンライン特有のスキルもあると思います。例えば、電波が安定しないような状態でもどういう言葉を使ってどういう風に伝えたらはっきりと伝わるかとか、長いセンテンスではなくて短い言葉でこういう風に言うと伝わるとかというスキルですね。音声の面で言うと、摩擦音や破裂音が多いとあまり伝わらなかったりします。母音をしっかり発音するとか、そのようなところの新たな気づきもあると思います。私たちも代替企画を実施してみて、非常にいろいろな気づきがありましたし、海外インターンシップはもちろん、さらに次のステップとして違う形でオンラインでの交流会を行うのも良いと思える機会でした。

Q.
最後にこのインターンをに行くことで参加者が将来どんな人になってほしいのか将来像がありましたら教えていただきたいです。

「可愛い子には旅をさせろ」っていう言葉があるのはなぜかな、と最近よく思うようになったんですけれども、やっぱり自分が想定していなかったような環境に入ることによってどうしたらいいのかを本当に真剣に考えますよね。それはおそらく生きる力にも繋がると思うんですが、誰かがしてくれるのではなく、自分がこの状況でどうするのかというのを考えて、まずどういう風に一歩踏み出したらいいのか考えて実行する力をこのインターンシップではつけて欲しいですね。それをもとに、将来それぞれの分野で活躍する人材なっていただけるのではないかと思います。必ずしも日本語教育ということではなくて、この経験によって開かれた視野ですとか、新しく得た知識とかいうことが必ず生きてくると思います。その経験を大切に次につなげるような形にしてほしいと思っています。
そのためには、行き当たりばったりで行って体験するというのではなくて、よく準備をすることが大切です。こうだろうと想像して行ったけども、この部分は違ったとか、ここはやっぱり勉強になったということがあると思うんですね。そういう意味では、事前事後の学習もしっかりして、このプログラムを自分自身で良いものに作り上げるようなことをしていくと、将来自分で何か仕事をする時には、自分から考えて一歩踏み出すような仕事ができると思います。それは教育の分野にかぎらず、ビジネスの分野でもそういった人材として活躍して欲しいと思います。
それから、他の文化圏を見ることによって違った視点は当然あると思いますので、それを受容する力、あるいは自分の中に隠れていた何か偏見みたいなものがあるのかないのか、そのような文化に対する気づきも得ていただくと、将来、違う文化の人と接する時にはこういう考え方はこのような文化に起因しているんだなぁとかですね、そのような対応力も出てくると思うんですね。このようなことも含めて、広く世界で羽ばたく人材となっていただけたらなと思います。

わたしが聞きました!
茂野 志織里 / Shiori Shigeno
日本語コミュニケーション学科3年生(取材当時)
元々日本語が好きで日本語を世界に広めるための勉強をしたい!という想いでこの大学に入りました。現在インタビューさせていただいた村澤先生のゼミに所属しています。海外での日本語教育について知りたい!と思い、海外インターンシップやZOOMでの活動に応募しました。  日本語を勉強している方たちの生活を実際に経験してほしいという思いや、他の文化圏での試行錯誤の体験を経て、世界で活躍できる存在になってほしいという想いがあることを知ることができました。私は世情により海外インターンシップには参加することができなかったのですが、日本語を教えることに興味がある方はもちろん、変わった経験がしたい方、海外で暮らす体験がしたい方は参加してみてはいかがでしょうか。