この人に聞きました!
武藤 泰子 先生 /Yasuko Muto
大葉大学 応用日本語学科 
武藤先生は、台湾という第二言語環境で日本語を教えています。台湾で日本語を教えることの難しさややりがいについてインタビューしました。また日本と台湾の文化や習慣の違いについて、日本人教師だからこそ知りえることまで聞きました。
聞いた人:新村 あずさ(武蔵野大学学生)
Q.
いつから台湾に住み始めましたか。また、なぜ台湾で日本語教師をしているのですか。

もう20年以上前から台湾に住んでいます。元々、大学院の時オーストラリアに1年、日本に1度戻ってきてその後スイスに3年住んでいました。私の気持ち的にはあともう1回海外に行きたいと思っていました。また、行きたい国としてはアジアの国を考えていました。アジアの国に行きたいと思う決め手は、見た目にありました。私にとって見た目が同じというのは、住む場所の条件としてかなり重要でした。オーストラリアやスイスでは見た目が異なるため、かなり人の目が気になることが多くありました。だから、同じアジア圏の方が住みやすいと思い台湾へ来ました。

Q.
台湾と日本の生活文化の違いで慣れない点や驚いた点などはありますか。

日本と台湾のトイレの違いは驚くことがあります。また、20年以上台湾に住んでいて未だになれないことは、学生が教師に対して、お菓子などのお土産をくれることです。教師が来る時は、仕事として来た場合でも毎回学生が何か用意してくれることに驚きます。学生の歓迎の気持ちが大きく、このような用意されるという感覚は未だに慣れません。

Q.
第二言語環境で日本語を教える上で意識している点はありますか。

やはり第二言語環境では日本語を使う機会がほとんどありません。だから使う機会をどうやって作り出すのか、どこに日本語を学ぶ意義を見出すかということを意識しています。別に日本語が出来ない人はたくさんいるし、できなくても困ることはありません。学生たちは、日本語や英語を勉強しているけれど、学習している内容は実際に日常で使えるか、また実際に使えると便利な日本語があるかと問われると割と少なかったりします。だから学習内容が学習者自身に使えると感じられるような授業を作っていかなければいけないと考えています。だから、今回武蔵野大学生が大葉大学に研修は学生にとってすごく良い機会です。台湾の都会の台北の方に比べて、台中や大葉大学のある員林市では日本語を話す機会がありません。だから、どうやって日本語をたくさん話す機会を増やすか、日本語に触れさせる機会を増やすかを常に考えています。

Q.
今までで教えていて難しかった文法などはありますか。

教えていて難しいと思うことはあるけれど、もうそんなことは気にしなくなりました。ただ、私が日本とちょっと違うと思うことは、センシティブに扱う内容に関してです。日本は家族の話題をタブーに扱ったりセンシティブな内容として扱ったりすることがあります。けれど、割と台湾はあっけらかんと「両親が離婚しる。」などの話をしたり、作文に書いたりします。逆に台湾のセンシティブな話題は各家庭のお金事情に関わる話題です。例えば、旅行の話題は、行く場所によって各家庭の金銭格差が出てくるため、このような話題を避けるようにしています。また、この問題は大学によっても異なるので金銭感覚の話題は難しいです。

Q.
先生が日本語を教えていて失敗したと感じたことはありますか。

台湾のセンシティブな話題で1つ失敗したことがあります。少し前に私が携帯の話題をした時に、携帯の通信の契約がどんなものかという質問をしました。自分にとって、携帯の通信料などはそこまで気にしていなかったため、ほんとに何も考えずに聞いたけれど、聞き終わった後にこの質問ちょっとやばかったなと思いました。家庭によって通信の契約料金にお金をかけれる家庭とかけれない家庭があるので、学生たちにとって振ってはいけない話題だったと思ったことがあります。学生たちから、文句などは言われなかったため実際はどうだったか分からないけれど、自分で失敗したなと思いました。最近はLGBTの問題もあるので世の常識を改めて考えていかなければと思いました。また、日本だったら会わないような考えを持っている人がいます。文化が違うからこそ、自分にとっては未知数ですが、未知数だからこそよく考えなければいけないなと思いました。

Q.
日本語を教える上で一番大切にしていることはなんですか。

練習じゃなくて、実際の話をさせるように教えるということを大切にします。日本で実際に使えるということではなく、教室での会話の内容が、教科書の内容を練習するのではなく、実際に伝えたい言葉を自分の言葉で会話するように授業をしようと思っています。たしかに、日本語を使うということは、実際の場面で使える日本語を教えると思っていました。けれど、そこだけに限定してしまうと教室がただの練習の場になってしまいます。それよりも、学生同士をあえて日本語で会話することで友達の新たな1面を知ることができたりします。また日本人は、日本語だとありふれた言葉を使って説明してしまうことがあるけれど、それが外国語になれば吟味しなければいけないので、より考えが深まるなと思います。 また、面白いと思った活動は、「褒める」という活動をした時、普段は照れくさくて言えないことでも日本語で伝えることで結果的に簡単に褒めることができたということです。

Q.
最後に日本語を教えていてうれしかった経験・やりがいはありますか。

自分は自立学習的な学習を重視しているのであまり、すぐに役に立つのか分からない学習方法で微妙な顔をする学生が中にはいます。ですが、1年終えた時に日本語学習に対する意欲が向上したと生徒から言われたことは嬉しい経験です。他には、作文とかを添削した時に、直した文をそのまま書く学生がいる中、私が添削してもらった文では伝えたいことが違い新たな文章を自分で考える学生がいると嬉しくなります。

〈感想〉

今回、武藤先生にインタビューをして第二言語環境での日本語教育はどのようなことを気をつけなければ行けないのか知ることができました。日本語を教える時の工夫だけでなく台湾と日本の文化や考えの違いがあるからこそ、配慮しなければいけないなど、異文化理解が必要なのだと思いました。日本語学習者に、話題を提供する時はその学習者の文化や考えに配慮した授業を提案していきたいと思いました。

わたしが聞きました!
新村あずさ / Azusa Shinmura
日本語コミュニケーション学科2年生(取材当時)
今回、外国で日本語を勉強をしている学生と交流をしたいと思いこの海外インターンシップに参加しました。私にとって日本語初級者に日本語を教える機会が初めてでした。そのため、思い通りに日本語が伝わらないこと、学習者の伝えたいことが分からないことなど、コミュニケーションで困る部分がありました。ですが、日にちが経つごとにシンプルな日本語で伝えらるようになり、学習者の日本語会話力も向上しているのが分かりすごくうれしいことばかりでした。今回の台湾の大葉大学での研修は日本語教育を学ぶだけでなく、異文化の人とのコミュニケーションの方法を学ぶこともできました。外国語環境で日本語を教えたい!異文化の人とコミュニケーションを取りたい!という学生はぜひ参加してみてください!